ベートーベン・ウイルス

へっぽこオーケストラの奮闘記

管理人 木槿猫

へっぽこ市民オーケストラが、気難しいマエストロによって一流のオーケストラに成長していくすがたを描くヒューマンドラマです。クラシックなどの音楽が好きな方には、特におすすめです。

難聴になっていくヒロインのバイオリニストをはじめ、人生や生活にさまざまな困難や悩みを抱えつつ、それでも音楽を続けようとする人たちの姿が印象的です。音楽に限らず、人は、現実の生活と夢の実現との間で、何度も深く悩むはず。特に「好きだけど自分には才能が無い」などという悩みはも誰でも一度は経験したことがあるはず。努力しても思うようにならないことや、家族に理解してもらえないこと、そんな苦しみとともにそれでも強く生きていきていこうとする登場人物の姿は、ドラマとはいえ、清々しい気分になります。

演奏される音楽も、よく親しまれた素敵な曲ばかりですよ。特に、モリコーネの「ネッラ・ファンタジア(ガブリエルのオーボエ)」は、ドラマを見終わった後、YouTubeでいろいろ探して何度も聞いてしまいました。

キム・ミョンミンさんが、自信と情熱そして毒舌が服を着たようなマエストロを好演しています。本当は優しいくせに、それを表すことが下手で不器用な性格。オーケストラの団員は、彼の毒舌に傷つきながらも、自分の才能を目覚めさせていきます。とはいえ、この毒舌は相当なもの。実際にこんな人がいたら、周囲は大混乱だろうなと思います。そんな彼が、コンサートで発するセルフがとっても粋です。ファミリーコンサートなので、会場には子どもたちがいっぱい。がやがやと騒々しくとても演奏を聴くような雰囲気ではありません。そんなやりたい放題の会場の子どもたちに言い放った一言が、

「大人の言うことをきかない子どもは、地獄に落ちますよ」

思わず吹き出してしまいました。お化けや鬼が来ますよ、なんていう脅しは聞いたことがありますが、「地獄に落ちる」って……。なんて、シャレたセリフなんだろうとすっかり気に入ってしまいました。以後、私も子どもにこのセリフを言う機会をうかがっております。